レコード会社にとっての懸案事項の1つに、“DRM Free”にして売り上げが伸びるかどうかという点だ。Appleの創設者であるSteve Jobs氏は、DRMを解除すれば売り上げが伸びると主張していたが、音楽CD購入枚数減少の穴埋めはできるのだろうか・・・
▼Amazon、Warner MusicともDRMフリー音楽提供へ
DRMフリー音楽の動きに主要音楽レーベルからまた新たな参加者が加わった。Warner Music Groupがデジタル音楽カタログからの楽曲(Led Zeppelin、Red Hot Chili Peppers、Green Day)をAmazonのDRMフリー「デジタルミュージックストア」で販売開始。EMI、Universal Music Groupそれに 33,000にのぼるインディー系レーベルに続くことになる。これでAmazonのデジタルミュージックカタログに含まれる楽曲数はトータル290万まで増加。対照的に、AppleのiTunesは600万以上の楽曲を販売するが、DRMフリーの楽曲はEMIからのものだけだ。
DRMフリー音楽販売でAmazonと最初に組むことで、EMIはAppleを冷たくあしらったことになる。今年はじめ、Universal Music Groupがしたように、だ。Appleが音楽業界で勢力を増しつつあるのを音楽レーベルは好ましく思っていない。そして、そのためAmazonやその他のデジタル音楽流通販売店舗をサポートして、再び優勢に立ちたいと考えているようだ。Amazonでは(楽曲により)異なる価格を付けられるようになっている(Appleでは対応していない)。もっとも、大半の楽曲は$0.89から$0.99で販売されている。そして、DRMフリー楽曲の価格設定においてAppleはAmazonの例に従わざるを得なかった。今年4月にEMIとDRMフリー楽曲の販売を開始した際、Appleは著作権で保護されている楽曲に比べて30%増しの金額で楽曲販売を試みた。通常のMP3よりもファイルの品質が高いことを理由にしたもので、この奇妙な価格設定に消費者は戸惑った。いったんAmazonが同じ楽曲をDRMフリーで高ビットレートのMP3形式で提供し始めるとAppleも価格を引き下げざるを得なかった。
著作権によって保護された楽曲にありがちなわずらわしくて無駄な制限が無いことで、DRMフリー音楽の人気が高まるにつれ、音楽レーベル各社は(これらの音楽を)黙認していることをAppleとのバーゲン交渉の手段として利用すると思ってよいだろう。毎年恒例のMacWorldカンファレンス開催が迫る中、Appleにとって、DRMフリー音楽におけるより多数のパートナーを発表するのに理想的な時期だ。しかし、Apple関連のうわさとしてそのような話題はあまり聞こえてこない。
▼DRMの魔女よ、さらば。ソニーBMGがDRM撤廃へ
ルートキットでDRM楽曲を推進してきたSony BMGがDRM撤廃に踏み切る。Businessweekが伝えた。
まだDRMのハンデ無しに楽曲を提供していない4大レーベルはSony BMGだけ。残る最後の1社が撤廃に動くことで、DRMの棺おけにも最後の釘が打ち込まれることになる。Sony BMGがアマゾンで発売するDRMフリー楽曲第1号は、Justin Timberlakeの最新の曲(訂正!)となる見込み。
今から12ヶ月近く前、マイケルはここでDRMは避けようのない死に直面するだろう、と書いたが、その彼が正しかったことが今日(米国時間1/4)証明された。次なるターゲットは映画スタジオだ。音楽分野は制覇した。あとは好きな場所で好きな時間に合法的に購入した動画を再生できるような環境の実現が当然、次なるゴールである。革命万歳。
▼ソニーBMG、DRMフリー高音質MP3のダウンロードパスを(店頭で)販売
Sony BMGが音楽ダウンロードギフトカードPlatinum MusicPassを発表しました。1アルバム$13またはスペシャルエディション$19のスクラッチカードを購入、記載されているシリアルコードをMusicPassサイトに入力すると音楽ファイルと特典がダウンロードできるという仕組み。面白いのはDRMなし・高音質のmp3ファイルになっていること。
「ソニーBMGがDRMフリーの音楽ダウンロードを開始」と表現しても必ずしも嘘ではないものの、ウェブサイトで直接購入するのではなく店頭で紙を買ってくるところがミソです。最初からオンラインで買えばよい気もしますが、iTunes Storeを持たないソニーが小売とも仲良くしつつ、ウォークマンユーザーにもiPodユーザーにも買ってもらえる仕組みとしてはなかなか興味深いのではないでしょうか。
▼ミュージックアルバム販売が下げ止まらない
音楽業界の流血が止まらない。デジタル楽曲販売の助けを借りてもまだ無理のようで、昨年デジタル楽曲売上げ高は45%近い急増を記録したものの、米国内アルバム売上げ全体では9.5%の下落となった(Nielsen SoundScan調べ)。調査ではデジタル楽曲はシングルトラック10曲でアルバム1枚としてカウントした。
統計を少し拾ってみよう。:音楽業界もそろそろテーマソングを変える時期だ。もうその話は書いたんだっけ?
- 2007年のCD・アルバム売上げ枚数は5億枚、デジタル楽曲はシングルトラック8億4400万曲(デジタル“アルバム”8440万枚に相当)
- 前年(2006年)のデジタル楽曲売り上げ数はシングルトラック5億8800万曲だった。
- 2007年の米国内楽曲売上高の23%はデジタル楽曲が占めた。